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【グノーシア】【短編集】宇宙を漂う船の中で

第5章 猫談義【シピ】


言った。言ってしまった。
皆の前で。しかも本人の前で。
勢いとはいえ、口が滑って本人がいるから言いたくないなんて、もう言っちゃっているようなものなのに。
羞恥心が最高潮になってもう限界だったのに、しげみちの圧に負けて言ってしまった。
でも返ってきたのは俺も好きだと言う言葉。
安心感と幸福感に包まれてどうにかなってしまいそうだ。
しかも………可愛い、と、言われてしまった。
目や爪の遺伝子を変えるのは嫌だったから耳だけ生やしてもらったけど、色んな星に行っても何人かには奇怪な目で見られた。
そんなことをせずに、むしろフレンドリーに接してくれる好青年風の彼に惹かれていった。
船の中にグノーシアが見つかって、みんなで命をかけた話し合いをすることになって。
それでも、彼は私を信じて協力しようと言ってくれた。
気がつけば好きになっていて、それをいつの間にか口走っていて………
「でも……嬉しい」
私はドクターだけど、名乗り出てはいない。
彼なら、私が本物だって、信じてくれるかな。
ああ、ここに来てグノーシアに消されたくないだなんて。
彼と離れたくない、彼の……シピの傍にいたいという理由で。
でも、それでいいんだ。
それが私を構成している。
自分のわがままで消されたくない。凍らされたくない。
土下座だってなんだってしよう。
彼が生きて、動いている間は。
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