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【グノーシア】【短編集】宇宙を漂う船の中で

第2章 Messiah【レムナン】


ここに来てどれくらいでしょうか。
深宇宙で機械に触れていた時はどんなに幸せだったことか。
それなのに、今はマナンという人の愛玩物になってしまった。
ああ、どうして。
どうしてこうなってしまったんですか…?
今日も地獄の"遊び"を終えた夜。
月が憎いほどに綺麗な夜。
そんな時、外から人がこちらに走ってくるのが見えた。
大きな窓を開ける。
「ねぇ、君。閉じ込められてるの?」
「……そうですけど、僕に何か用ですか」
「助けてあげる」
それを聞いて、僕はもちろん嬉しかった。
でも、
「ダメです…!もし見つかったら、あの人に貴方が捕まってしまいます…!」
僕のせいでこの人が不幸になるなんて許されない。
「大丈夫だから、私を信じて」
何故かその言葉には説得力があって、それ以上抵抗することはできなかった。
女性なのか汎性なのかは、暗くてよく分からない。
彼女はヘアピンをどこからか取り出すと、僕の手錠と足枷の鍵を素早く外してくれた。
「……!?どうやって…」
「シッ。静かに。もし見つかったら私が捕まっちゃうんでしょ?」
「あ……」
さっき自分で言ったのに。
目の前で行われている出来事に現実味がなくて、思わず頭から抜けてしまっていた。
「この壁、何でできてるか分かる?」
「え……多分、合成金属を強化して、どんな衝撃も吸収できるようになった最高品質のものだと思います」
「ん、分かった。じゃあ、その場合は……」
まさか、この壁を壊すと言うんだろうか、この人は。
すると、彼女が取り出したのは…
「下がって」
粒子分解装置と思われる機械。
機械が好きな僕はもちろん知っていたけれど、見たことない形状だった。
そのスイッチを入れて、僕の冷たい牢の壁に向けて放つ。
粒子分解装置の出すレーザーは、当たるとどんなものでも粒子レベルで分解してしまう。
使用時には要注意というやつ。
すると、やはり見たという記憶はないほど極太のレーザーが壁に放たれて、彼女はその装置を動かして、僕が通れるほどの穴を開けてくれた。
「逃げるよ。私の手を取って」
差し伸べられた手を握って走り出す。
これが彼女との不思議な出会いを果たした夜だった。
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