第38章 利休の匣〜2026信長誕生祭〜
「…貴様は会ったことがなかったか?あれは一筋縄ではいかぬ奴だ。このようなものを贈れば、俺が平静でいられぬと分かっていて寄越したのだろう」
信長は苦笑にも似た吐息を漏らしながら、朱里の腰へ指先を滑らせる。異国の薄絹は驚くほど頼りなく、触れられるだけで肌へと熱が伝わって来る。
「だが今は…利休の話はするな」
「……?」
「そのような艶めかしい姿で、貴様が他の男の名を口にするなど…気に食わん」
「そんなつもりでは…」
独占欲の滲む言葉をさらりと口にして、不機嫌そうに唇を尖らせる信長に、朱里は思わず小さく笑みを零す。
「何がおかしい?」
「だって…私は利休様に会ったこともないのですよ?そんなやきもちみたいなことを…っ!?」
ーちゅっ…
腕を囚われたまま、唇を塞がれて、言葉の続きを遮られる。
「言うな、と言ったであろう」
「信長さま…」
甘くも強引な口付けに絆されて、とろりと蕩けた目で信長を見上げながら名を呼んだ。
「それでいい。今宵、貴様は俺の名を呼び、俺だけを見ていればよい」
満足そうに笑うと、信長は朱里を自身の胸元へと引き寄せる。薄絹が翻り、露わになった腰を指先で直接なぞられて甘い疼きが背を駆け上がる。
そのまま抱き上げられて寝台まで運ばれる。尻や足など、衣で隠れぬところを信長の手が掠めるたびに、心の臓がうるさく騒ぐ。
寝台へ優しく降ろされた瞬間、ふわりと薄絹が乱れて白い肌が月明かりに浮かび上がる。
信長はその姿を眺めたまま、しばし言葉を失ったように目を細めた。
「っ…見ないで下さいっ…」
無言のままの信長の視線に耐えられず、寝台の上で身を縮こまらせる。
「無理を言うな。貴様は何を着ていても美しいが、今宵は特に美しい。これは…脱がせるのが惜しいな」
「っ……」
薄絹の上からゆっくりと焦らすように肌をなぞられ、首筋に熱い唇が触れる。口付けは首筋から鎖骨へと下りていき、唇で細い肩紐を肩から滑り落とす。
「っ、やっ…」
露わになった肩口に、啄むように何度も口付けが落ちる。ずれた肩紐はそのままに、僅かに見える胸の谷間に、ちゅうっ、と唇を押し付けて強く吸われる。
口付けの合間にも、信長の大きな手は薄絹の上から朱里の身体の線を確かめるようにゆっくりと肌を撫でる。
薄く柔らかな衣が肌を滑る感触は、直接触れられるよりも心地良かった。
