第38章 利休の匣〜2026信長誕生祭〜
異国の布は驚くほど薄く、肌を覆うというよりは見せるために作られているようにしか思えなかった。
金糸の刺繍や深紅の飾り紐など、装飾としては一級品で非常に美しいが、どう見ても煽情的で、男をその気にさせるためのものにしか見えない。
そんなものを自分が身に着けるなど…それも信長に見せるためだけに。
(恥ずかし過ぎるっ…)
ここに至っても躊躇う気持ちが拭い去れず、薄絹の感触を確かめるように、衣を何度も触ったり持ち上げたりしては、なかなか着替える決心が付かない。
「……朱里」
衝立の向こうから低く呼ばれ、びくりと肩が跳ねる。
「まだか?」
「ま、まだです!もう少し…待ってくださいっ」
急かす声に抗議しながらも、ここまで来て抗えるわけもなく…覚悟を決めて腰紐を解き、しゅるりと寝衣を脱ぎ落とした。
初めて見る異国の衣は日ノ本のものとは形も違い、着方も正しいのか分からないまま、戸惑いつつも何とか身に着けてはみたのだが…
「っ……」
いざ着てみると、思っていた以上に肌が透ける。肩部分は細い紐だけしかなく、胸元の薄絹は胸の尖りが透けて見えるほどに薄く、胸下から裾に向けてふわりと広がっている。丈も短く、お臍のあたりがちらりと見えてしまう。腰回りなどは身体の線が透けてしまっていた。
しかも、この衣は上下が分かれたものだったらしく、下に身に着けるものがこれまた想像を超えていた。
(こ、これ…本当に大丈夫??これだけしか隠すところがないなんて…)
面積の小さい布は前を辛うじて隠してはいるものの、後ろは紐のように細くなっていて、朱里の形の良い丸い尻は露わになってしまっている。
すらりと伸びた白い足も丸見えで、どうにも落ち着かない。
せめて上の衣の丈がもう少し長ければ尻まで隠せるのだが、虚しい抵抗で裾を引っ張ってみても、どうにかなるようなものでもなかった。
「……朱里」
「は、はいっ!?」
「まだか?」
期待の中に若干の苛立ちを滲ませた信長の声に一気に焦りが募る。
(どうしよう…今更無理とは言えないし…でも、これはさすがに恥ずかし過ぎるっ)
「っ…もう少し、待って…下さ…」
「…手伝ってやろうか?」
「結構ですっ!」
「…………」