第17章 拾陸 刀鍛冶の里へ
チャポンーーーーー
『気持ちいいー…』
私は背伸びをして冬の夕空を見上げた
雲は分厚く、雪が降りそうだった
あの日からもうすぐ一年か…
外の寒さと温泉の温かさに心地好くなり、私の視界が落ちていった
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(鬼になれ!雪梛!!)
ねぇ、どうしてそんなに必死なの?
兄妹で鬼になってどうしたいの?
鬼になったら陽の光を浴びれないじゃない…
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『ゴボッ』
急な眠気に襲われ、そのままうたた寝してまったようだ
溺れかけ、お湯を飲んでしまった
最近はこの夢の繰り返しだ
ただ前と違う所があった
それは無惨であろう兄上が必死で私を鬼にしようとしていること
聞きたいことは山程あるのに私の意志や願いは届かない
『…逆上せる』
考えすぎで頭まで火照っていた
私は勢い良く立ち上がり、温泉を後にした