第15章 拾肆 止まない音
街に入る手前、藤の花の家に着くと一人の男がいた
それは、いつものド派手な装飾音を一切身に付けず
灰色の渋い着物に、深緑の羽織りを纏った天元だった
いつもとは違い大人びた、所謂眉目秀麗な天元に目を見開いた
「遅かったじゃねーか」
『あ…いや…』
会って早々文句の一つでも言ってやろうかと思っていたが
その言葉を飲み込んでしまう程驚いた
「惚れたか?ん?」
『…』
中身はいつもの天元でつい呆れ顔をした
「ったく連れねーな、そんじゃこれ着て貰おうかね」
手渡された物は藤色の着物に紅色の羽織りだった
私はそれをじーっと見つめていた
「手伝うか?」
『…行ってくる』
私はそそくさと藤の花の家へ入っていった