第13章 拾弐 珠世と愈史郎
『すいません長居してしまって…ありがとうございました』
「こちらこそ、ご協力よろしくお願いします」
「ふん。二度と来るな」
私は珠世さんの手を握った
『今度会う時はもっとたくさん薬の話をしましょう』
「ふふ、もちろん、喜んで」
「無視すんな!!!!!そして珠世様に触れるなコラぁ!!!!」
『ありがとう愈史郎、また来るね』
次に愈史郎の手を握り微笑むと、顔を赤くして黙った
これも黙るのに効果があるようだ
それでは、と街を後にした
自分がずっと見ていた夢は紛れもなく無惨と雪梛の兄弟の日常
何故私が雪梛なのか判らない
二人とも病弱で、無惨は妹の私を助けようとしていることは確かだ
でもそのために鬼にさせるのか?
だとしたら常軌を逸した男だ
これまでもそうやって鬼になった者もいるだろうに…
(…仕方の無い奴だな。)
『……』
自分の右手を見る
握られた手はまるで昨日のように覚えている
あの二人に何が起きたのかまだ見せてくれない
所詮夢とは分かっていても、もどかしい