第13章 拾弐 珠世と愈史郎
その後、珠世さんに扱っている薬を教えてもらっていた
『夢の中の兄は…無惨なのでしょうか…』
「…鬼無辻は常に人の生活の内側に入ります。云わば変装をするのです」
『そうですか…』
「随分前ですが、黒い巻き髪で目は赤く、年齢は20代半ば程の容姿でした」
『黒い、巻き髪…』
(鬼になれ、雪梛…)
鼓動が早くなる、頭がズキズキと痛む
身体中の血液が速度を上げ、厭な汗が出てきた
「…鬼舞辻の過去は知りませんが、その夢が本当ならおそらく…」
『…所詮は私の夢に過ぎませんから……』
薄々感づいていた、この夢は無惨が人間だった頃の物ではないかと
でもたかが夢、こんな話を理解してくれる人等いない
あいつは諸悪の根源なのだから