第11章 拾 柱として
グイッーーーーー
『!』
腕を掴まれたと思えば冨岡さんは私を抱き締めた
「少なくとも俺は助けられた、今もそうだ。お前の行動に決して間違いはない、柱として胸を張って生きろ。疲れたなら俺を頼れば良い」
冨岡さんは話すのが苦手だ
でも今の冨岡さんは別人のように思えた
それなのに私の心を晴らすには充分で
全てを包んでくれるような暖かい言葉だった
『…冨岡さん』
「義勇だ」
『…ん?』
私の言葉を遮るように言った
「…義勇だ」
いや、聞こえてるけど…もしかして呼んでほしいのかな?
「…宇随は下の名で呼ぶようだが」
『あれは成り行きで…冨岡さんは兄弟子だし…』
「成り行きなら呼ぶのか」
抱き締める力が強くなった
先程よりも鼓動が更に五月蝿くなる
これは酔っているせいじゃない
そして自分の事で精一杯だったが、冨岡さんの鼓動も五月蝿いことに気付いた