第11章 拾 柱として
初めて他人を屋敷に招いた
酔い醒ましに水を飲み、縁側に並んで座った
『そう言えば冨岡さん、柱就任おめでとうございます』
「お前だろう、推薦したのは」
『でも冨岡さんの進む道に柱は少なからずあると思ったので…』
「そうだな…感謝する」
冨岡さんの青い瞳が細くなり端正な顔が微笑みかける
この人の笑った顔を初めて見た、こんなに綺麗な顔で笑うんだ…
鼓動が五月蝿い、また酔いが回り始めたのかな
いいえと返し、空を見上げた
雲一つ無く星が満天に輝いていた
『綺麗…』
私の心とは大違いだ…
この空に伝えたら、この靄は晴れるのだろうか…
仕舞い込んでいた靄がぽつりぽつりと言葉となって出てきた
『この半年で…鬼殺隊として剣を振るっても、助けられる命には限りがある事を知った…』
下を向き、キュッと羽織を掴む
『柱になってから守りたいものがどんどん増えていって、自分の行動は正しいんだろうかって自問自答を繰り返す毎日に…疲れちゃって…』
柱としての役割は頭では充分に理解している
でも心が追い付いていなかった
何が正解なのか分からなくなってしまっていた
満天の空に伝えても、心の靄は晴れなかった