第9章 捌 廉雪山
とにかく催眠状態の二人を起こさなければと声をかけた
『目を覚ましてください、夜に出歩くのは危険です』
「…これから山に登るんです。僕たちの邪魔をしないで下さい」
「この山の頂上で接吻を交わすと死ぬまで幸せに生きていけるのよ。ねえ、恒彦さん」
「あぁ…それでは」
巧みに操っている…十二鬼月か
女の言うことが本当ならもっと上に本体が居るのだろう
私は木よりも高く飛んで先を急いだ
…なんだこれは
鬼の気配を感じ上へ登っていたが、六合辺りから行く手を阻むように数十本の木でできた触手が地面から襲い掛かってきた
いくら斬ってもキリがない
玖ノ型 水流飛沫・乱
連続技で強引に前へ進むと十にも満たない容姿の鬼がこちらを見ていた
眼には下弦の肆、もう補充されていたようだ
「兄さんの邪魔しないでよ」
血鬼術 千樹
全方向から触手が現れた
(…自分が死ねば良いなんて、思わないで)
そうだ、俺はもう迷わない。この命を繋ぐと…
水の呼吸 拾ノ型 生生流天
「なっ!」
剣を振るう度威力が増大する
四度目で首を捉えた
鬼は消滅する筈だった
「痛かったよ、急に酷いじゃないか……」
「!」
…これは本体じゃないのか