第9章 捌 廉雪山
夜に差し掛かる頃、二人は廉雪山に到着した
季節は夏だと言うのにこの付近はとても寒く、山には雪が降り続いていた
「俺は右から行く」
冨岡さんはそう言うと軽快に走り去っていった
昔は冬が大好きだった
今も嫌いではないが、家族の事を思い出してしまう
この寒さは半年前のことを嫌と言う程蘇らせた
冨岡さんと逆方向を歩くこと数分、日が沈み辺りは月明かりに反射し一面の雪景色が広がっていた
綺麗だな…
そう思い胸が苦しくなった
視線の端に夫婦らしき二人が山へ登っていた
だが脳の動きがおかしい
血鬼術で操られているようだ
先程から山全体に鬼の気配を感じるが、決定的な居所が掴めないでいた