第25章 弐拾肆 大きい身体と大きい心
「ではないか」
悲冥嶼さんだった、相変わらず身体は大きいが気配は薄い
『奇遇ですね、見廻り帰りですか?』
「左様…」
だけど屋敷は私の屋敷とは全然違う所にあったはず…
『悲鳴嶼さんは此方に何か用でも?』
「お館様への報告があるものでな…」
『あぁ、成る程』
悲鳴嶼さんはかなり山奥に屋敷を構えている為
見廻り後そのままお館様へ報告するために此方に赴いたらしい
長年柱をしている悲冥嶼さんの目は殆どみえていない
だがその分人の心を見据え、時に個性溢れる柱を牽引してくれる
今日はいつもの気配とは違い、穏やかな気配を感じた
「…その猫は…」
『あぁ、親猫が居なくて…どうしようかと思』
「その役、買って出よう」
話の途中で私に近付き、両手を差し出した
大きな身体が食い気味に来て驚く私は
その凄味に負け、子猫を渡した
すると悲鳴嶼さんの顔は綻び、慈しむように子猫を撫でた
心成しか子猫も安心した顔を見せた
『動物が…好きなんですね』
私が言うと撫でる手を止め、寂しい気配をさせた