第24章 弐拾参 過去の記憶
目を薄く開けると仄かに秋の空気と私の好きな香りがした
その香りで義勇の屋敷にいる事を思い出す
「夢を見ていたのか?」
珍しく先に起きていた義勇が私の顔を覗いてそう聞いた
『え?』
「苦しそうな顔をしていた」
『あぁ、呼吸を教えて貰っていた頃の夢だったから…』
「それは苦しいな」
『よく鼻血を出してた』
「俺は…失神した事がある」
『義勇が?……ふふふっ』
笑うと義勇はムッとして、私の頬をつねる
『いだだ…ごへんらはい』(ごめんなさい)
「はぁ…」
そう溜め息を溢すと布団から出ていった
起き上がり、鈍った頭で明け方の事を思い返す
いつもの見廻りの帰路、義勇と鉢合わせた
今日の任務を告げられていなかった為
義勇の屋敷へ上がり報告書の記入を終え
共に朝餉を取り就寝したのが八時
今は昼頃だろうか…
すると戻ってきた義勇に竹刀を渡された
「今日こそ勝たせて貰う」
義勇は鍛練になると私に必ず勝負をかけてくる
中々の負けず嫌いだと思う
でも私の負けず嫌いはそれ以上だ
『…それは無理』