第23章 弐拾弐 蟲柱
西側に鬼は居なかった
東側に行くとしのぶが毒で鬼を倒していたところだった
「シノブ!!産屋敷へ向カエ!!」
上からしのぶの鎹鴉が静かな森に伝令を告げた
『しのぶ、おめでとう』
「…のお陰です…」
ありがとうございますと悲しい顔をして言った
私はしのぶの手を握る
『血の滲む努力がなければ柱になれない。しのぶは凄いよ』
「…っ、私、絶対仇を伐ちます。何があろうとも…」
『うん』
少し瞳が潤んだ
それは私にしか見せてくれない顔だ
カナエがいなくなった今、しのぶは笑顔を崩さない
カナエが好きと言ってくれた笑顔を絶やさないようにしているからだ
だが常に姉を殺した鬼への復讐心が渦巻いていて、唯一私の前だけは本心で居てくれた
それが私にとっては嬉しいことで
冷え切っていた私の姉心を温めてくれた
旅立っていった互いの姉弟の穴を埋めるように
私達は支え合っていたのだ
少ししてから隠が現れると、私達はこの場を去った
しのぶはお館様の元へ向かい
私が自身の屋敷で湯浴みをする頃
蟲柱 胡蝶しのぶが就任したと白音が報せてくれた