第22章 弍拾壱 束の間※
言葉を続けようとしたが、男の後ろに義勇の姿があった
あまりに顔をしかめているので、私の顔もしかめてしまう
「どうしたの?そんな顔して、まぁどんな顔も可愛いん、いでーーーー!!」
義勇は話している男の肩に手をやる
骨が軋む音がした
『…残りのお団子食べていいよ、じゃあね』
私は義勇の手を男から離すと、引きずるようにそのまま甘味処を出た
「誰だアイツは」
『分かんない…食べてたらいた』
「…そうか」
少し怒っているようだ
『義勇』
「?」
『いつも一緒にいてくれてありがとう』
「……」
無表情で此方を見るが、怒っていた空気は柔らかいものになった
口数は少なくとも、義勇の事は分かる
それは私の見えるものが違うからか、それとも相性が良いからだろうか…
(自分の気持ちに正直になってね)
カナエの言葉が蘇った
私は今、正直になっているのかは判らない
(自分なりの幸せを掴んでね)
今言えることは、とても幸せだと言うこと
これ以上を望むことはない
柱として常に冷静な心を保つ中で、義勇は私の唯一の休息場なのだ
義勇も同じことを思ってくれているんだろうか