第2章 始まりの日
「…まぁ、話を戻すぜ。
お前の体は、さっきの交通事故で死にかけてる訳だ。
んで、お前がいた世界には霊子っつう概念がねえから、あのまま放っとくと魂も一緒に消えちまうんだ。
お前の魂が消えちまうと、俺はお前っつう主がいなくなって困る訳よ。
だから俺は、お前の魂を俺の世界・つまり霊子でできてるこの世界に連れてきた。
霊子でできたこの世界なら魂は形を保てるからな。
かといって、俺の世界にずっとお前がいられる訳じゃない。
お前には、本来居るべき世界があるからな。」
静かに聞いていた悠華に向かって、男の人はそう言って何故か寂しげに薄く笑ってみせた。
その笑みはどこから来るものなのか、事情を知らない悠華には理解できなくて。
しかし笑みの理由よりも、悠華には言葉の意味の方が気になった。
「居るべき…世界?」
「あぁ」
居るべき世界とはなんのことなのか。
自分の元居た世界のことだろうか―…?
そう思った次の瞬間、男の人は笑い出して。
「…言っとくが、お前が事故った世界じゃないからな?」
まるで悠華の心の中を見透かしたような言葉に、悠華も思わずびっくりする。
「…よく分かりましたね」
そう言って少し感嘆の声を漏らす悠華に、男の人はにやりと笑って。
「お前分かりやすいからな」
楽しげにそう言うと、軽く悠華の頬を抓った。
「いひゃい…」
「んじゃ話を続けるぞー」
「はにゃひてふらはひ」
悠華の言葉にはお構いなしで、そのまま話し始める男の人に、悠華も少し諦めの表情を浮かべた。
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