第2章 始まりの日
「…急に抱きしめたりして悪かった…そういや怪我、大丈夫か?痛むところとか…」
男の人は少しだけ申し訳なさそうな表情を浮かべ、すぐに心配そうな顔をする。
そして心配されたところで、自分は事故に遭ったことをやっと思い出した。
「だ、大丈夫です。
えっと…ここは…死後の世界とかなのかな。何もなくて寂しいところ…」
悠華が辺りを見回しながらそう笑えば、男の人は少し驚いたような悲しいような顔をした。
「悠華…ここはそんなもんじゃねえよ」
「え…?」
(それじゃ、ここは一体…?)
悠華がそう疑問に思うや否や、男の人が口を開いた。
「ーーここは俺の世界。そして、お前の世界だ」
「……え…?」
(あたしの、世界?)
突然のその言葉に、思わず耳を疑う。
「それって、どういう意味…?
…あなたは誰?何を知ってるの…?」
何一つ分からないこの状況。
頼れるのは、今目の前にいる男の人だけで。
少しの静寂のあと、男の人が重い口を開いた。
「…ーー俺はお前の斬魄刀。
そしてここはさっき言った通り、俺と、俺の主であるお前の内在世界だ」
「え…?」
(斬魄刀とか内在世界とか…それじゃまるで…)
ーーBLEACHの世界と同じ
浮かんだその一つの共通項は、悠華の心に、大きな期待と微かな不安を滲ませていく。
「貴方が…あたしの斬魄刀…?」
「…あぁ」
男の人から告げられた事へのあまりの驚きに、悠華は思わずへたんとしてしまい。
俯いて黙り込んでしまった悠華を見て、男の人は小さな溜め息と共に、仕方ねえか、と零すと悠華の前にしゃがみ込み、そっと肩に手を置いた。
「悪ィ、話が急すぎるよな…。
全部ちゃんと説明すっから、聞いてくれな?」
そう言って悠華に向き合った男の人の声は、小さな子供をあやすように優しくて。
その声に少し安心したのか、悠華も小さく頷いて答えを返した。
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