第2章 始まりの日
見慣れた町並みの中を歩き続け、細い路地を抜けると、大きな車道に面した駅前の通りに出た。
交通量の多い此処は、車だけでなく人も多く、騒がしい。
今も駅へと続く横断歩道を渡ろうとしている人々で、辺りは溢れかえっていて。
この時間は特に、仕事や学校を終え家へ帰ろうとする人々が多いため、混みやすい。
現に悠華の周りには、スーツや制服の人ばかりだった。
(この様子じゃ電車も混んでるかなぁ…やだなー)
ふぅ、と息を吐き出せば、教科書やらノートやらで重たい鞄を肩にかけ直して。
そういえば、と止めたままにしていた音楽をつけようと、ポケットに手を入れた瞬間。
《 ヤッ…ト…ミ…ツケ…タ… 》
「――ッ!?」
突然、ノイズまじりにイヤフォンから男の声が聴こえてきた。
ノイズまじりなのに、はっきりと聴こえたその言葉。
まるでそれは、耳元で誰かが囁いたかのように鮮明で。
けれど即座に後ろを振り向いても、そこには誰もいなかった。
「なん…なの…!?」
その男の声もノイズも、その一度っきり、何も聴こえなくなった。
(やっと、見つけた――…?)
誰が?
何を?
得も言われぬ恐怖感と不安に襲われ、その場に立ち竦んでしまう。
そんな時だった。
突如けたたましいクラクションと共に、トラックがこちらに向かって猛スピードで走ってきた。
「え…」
気付いたところで、時既に遅し。
(轢かれる――…!!)
もう無理だ。
そう覚悟し、堅く目を閉じるとすぐに訪れるであろう痛みを待った。
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