第2章 始まりの日
「…ところで悠華サン、行くアテとかあるんスか?」
「え?…あ、あぁー…ない、です…」
浦原からの質問に、悠華はあははーと乾いた笑いを浮かべて答えて。
「ま、そうだろうとは思いました。
…ーーそこでどうでしょう、ウチに住むってのは!ちゃあんと衣食住も保証します。勿論貴女が良ければ、ッスけど」
浦原の明るい調子の言葉とともに、手元の扇子が小気味よい音を立てて開く。
突然の提案に、思わずぽかんとする。
口を開けて固まってしまった悠華の頬を、浦原は楽しげにつつきはじめる。
「大丈夫ッスかー悠華サーン」
「ひゃ、ひゃい…大丈夫ですからやめてください…」
「それで、返事は?」
浦原はニコニコと笑顔を浮かべて返事を待っている。
「えっと、ふ、ふつつかものですが、お世話になります…っ!」
ペコリと頭を下げてそう言えば、後ろの襖が勢いよく開いて。
「よろしくお願い致しますぞ悠華殿!」
「なんだよ店長、そんな得体も知れねえ奴のこと泊めるのかって痛え痛え痛えよテッサイ!!」
「ジン太殿!客人になんと失礼な!」
「あ、あの…雨です…よろしくお願いします…」
開いた襖から大男のテッサイ、赤髪の男の子のジン太、黒髪の女の子の雨が賑やかに飛び込んできた。
悠華はその様子に思わず笑みを零す。
そして、皆の方に向き直り、頭を深く下げた。
「助けてくださって本当にありがとうございます。
…皆さん、これからお世話になります!」
顔を上げた悠華の満面の笑みに、思わず皆が見惚れてしまった。
「…そんじゃあ改めて…よろしくお願いしますね、悠華サン♪」
浦原のその言葉に、悠華は嬉しそうに頷いた。
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