第2章 始まりの日
二人が立ち上がった時、突如真っ白な空間が小さく音を立てて揺れ始めた。
「え!?何が起きてるのッ?」
(……そろそろ限界か)
突然のことに慌てる悠華を横目に、龍仙華は小さく舌打ちをして何もない空間を睨む。
「悪い悠華、もう時間がねえ…向こうの世界に送るぞ。
いいか、困ったらすぐに俺を呼べ。いつでも応えてやるから」
焦るように龍仙華がそう言って勢いよく手を合わせば、黒揚羽がどこからかひらりと現れた。
黒揚羽が悠華の周りを飛び回ると、悠華の体が少しずつ透け始めて。
「うん!いろいろとありがとね、龍仙華!」
大きく手を振りながら、透明になり消えてゆく悠華の姿を、微笑み手を降って見送る。
一筋の光となった悠華のいた場所には、黒揚羽がひらひらと舞っていた。
「さて……姫のお帰りだ。どう動く?」
悠華が居なくなり、静まり返った空間で、龍仙華はぼそりとそう呟いた。
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