第2章 始まりの日
「まぁそう深く考える必要はねえさ。
お前の大好きなやつらがいる世界で生きられるんだぜ?
ほら、楽しみじゃねえのか?」
そう明るい声で言われ、確かにそうだと今更気付く。
何も悲観的になることはない。
目の前にある現状を楽しめばいい。それだけだ。
そう考えたら、先ほどまでの暗い気持ちはどこかに飛んでいってしまって。
これから始まる新しい世界を想像して表情を緩めれば、男の人はお、と小さく声を上げて。
「元気、出たか?」
にぃ、と笑う男の人に、大きく頷いてうん、と返せば頭をぽすんと撫でられて。
懐かしく感じる、大きなその手の感触に安心する。
「…あぁ、そうだ。お前にこれを渡しとく」
思い出したように男の人が取り出したのは、雫形に施されたアメジストが揺れるペンダントだった。
華奢な銀の鎖に通された紫の綺麗な水晶は、光を反射してきらきら輝いている。
「綺麗…これは?」
「御守りってとこだ。肌身離さず着けとけよ。…俺だと思って」
男の人は悠華の首にそれを着ければ、悪戯っぽく耳元で囁いた。
「っ…!やめてよ、もう」
ほんのりと顔を赤くして頬を膨らます悠華を見て、男の人は満足げに笑い、そばを離れた。
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