第2章 始まりの日
「―なぁ、悠華は"パラレルワールド"って知ってるか?」
男の人が柔らかい声色でそう言えば、恐怖で目を見開いていた悠華の顔がゆっくりと上げられた。
「パラレル、ワールド…?」
恐怖のせいか、少し掠れてしまった声で男の人の言った言葉をくり返して。
そんな悠華の頭を優しく撫でながら、男の人は話し出した。
「そ、パラレルワールド。日本語で言うと平行世界ってやつだな。
平行、つまり同時進行で、自分が今いる世界以外にも色んな世界が存在してるっていうことさ。
つまり、お前が今まで暮らしてきた世界があるとともに、BLEACHの世界も存在してんだ。
このどの世界もパラレルワールドとして存在してる。
だから別に悠華がいた世界もちゃんと存在してるし、今までのことは夢でもなんでもねえ。
言い方が悪かったな。すまねえ…」
悩ましげな表情で謝る男の人に、ごめんなさいと悠華も謝って。
この人は悪くないのに。
説明してくれて、自分を導いてくれているのに。
そんな彼を困らせている自分が情けなくて、申し訳ない。
ーー別に否定された訳ではない。そう分かっていた。
ただ、怖かった。
自分が自分でないような気がして、怖かった。
そんなことを思っていれば、男の人は私の考えを察したのか、
「お前はお前だ。誰でもないお前なんだ。
化け物でもなんでもねぇ。
俺の大切な主、ただそれだけだ。」
そう言って、眩しいくらいかっこいい笑顔で、頭をくしゃくしゃと撫でてくれた。
悠華もそんな男の人に応えるように、そして自分の負の感情を押し潰すように、明るく笑ってみせた。
「ったく、やっと笑ったな」
そう言って嬉しそうに笑う彼に、嬉しいような照れ臭いような気持ちになって。
「…ありがと、です」
「いーえ」
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