第2章 始まりの日
そんな悠華に、男の人は畳み掛けるように話を続ける。
「お前があの世界に懐かしさを感じるのも当たり前だ。
ーー桜木悠華、お前は元々BLEACHの世界の人間なんだよ」
それは、あまりにも突然のことだった。
自分が、あのBLEACHの世界と繋がりを持っていたことは勿論嬉しい。
今まで自分の感じてきた懐かしさの理由についても、それが事実ならば納得できる。
だがそうは言うものの、心は素直にそれを喜ばしいことだと受け止めきれずに、困惑を隠せない。
「あたしが…BLEACHの世界の人間…?」
呆然と、悠華が大きな目を見開いてそう呟けば、男の人は静かに肯定して。
「じゃあ…あたしが今までいた世界は一体何…?
ーーあたしは、誰なの…?」
あまりに突然のことで許容量を超えパンクした悠華の頭は、浮かんだ疑問を言葉にしてぽとぽとと吐き出させる。
零れ落ちるようなその声は、恐怖を帯び僅かに震えていて。
気持ち悪い。
自分は一体何者なんだ。
分からない。何も。
理解できない。否、したくないのだ。
(あたし、どうして―…?)
「ッもう…分かんないよッ…!!」
振り絞るように、叫ぶようにただ悲痛な言葉を口にする。
畏怖に震える己の体を抱きしゃがむ悠華の体を、男の人は優しくそっと抱きしめて。
まるで、怖い夢を見た子供をあやすように優しく背中を摩った。
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