第1章 ※煉獄杏寿郎
ドキッとしたが、負けじと続ける。
「まだあるよ、杏寿郎は強くて優しくて、誰からも尊敬される柱で…柱の皆んなからも尊敬されてる…。私は継ぐ子を育てる責任も取ろうとしない、隊士との関わりも持たないようにしている…氷柱とはよく言ったもので氷のような冷たい女だから…私にはあなたは勿体ないよ」
ジッ…と私の目を見て真剣に話を聞いてくれる杏寿郎。いつもは私の話なんかお構いなしで自分ばかり話して完結していくのに…。
言い終えると本音をこんなにも話したことになんだか気恥ずかしくなって、じゃあ…と布団に向かった
布団に向かった私を引き止めるべく、杏寿郎は私の手首を掴み、向かい合って座らせた。
「杏寿郎…?」と首を傾げると
「俺は、これしきのことで君を諦めるつもりは無い。それに君は熱い女性だ。隊士になるにも、柱になるなら尚更、大変な努力をしている。持って生まれた才も、努力が無くては輝かない」
杏寿郎は私のめを真っ直ぐに見て、私の膝に置かれた両手に手を添えながら続けた。
「継ぐ子に割く時間よりも多くの鬼を滅するべく任務に赴いている事、隊士と関わればそれだけ死が辛くなる、ただそういう選択をしているだけだ。そしてそれは冷たいからじゃない」
ぽとりっとふいに私の頬を涙が伝った。
「涙が出ないから悲しくない訳ではない。声を出して笑わないからといって楽しくない訳でも無い。君は血の通った、熱く、心を燃やす氷柱だ」
杏寿郎はそう言うと、私の頬の涙を人差し指の背で拭った。
「そして俺はそんな君を一等好いているし、側にいて欲しいと思っている。駄目だろうか?」
そんな風に真っ直ぐに言われて、もう何も拒む理由など無い。私の事をそこまで見て、わかってくれているならそれだけでもう充分過ぎるくらいだ。