第1章 ※煉獄杏寿郎
そういった方面には関心も経験も無い私でも、杏寿郎の熱い想いが伝わってくる。
けど、育ちも良く、誰よりも熱く、強く、優しいこの人に私なんかが釣り合うはずが無い…
「杏寿郎の事は好きだよ…けど、ほら…」
「そうか!俺の事を好いてくれていたのか!」
杏寿郎は私の心の中の葛藤を読めるわけでもないので、今出てきた私の言葉だけを取り、思わず大声がまた出てしまっていた。
「杏寿郎、声大きいよ…夜だから…ね?」
「うむ、すまない。カヲルが俺の事を好いてくれていたとわかって興奮してしまった、不甲斐ない」
少しはにかみながら笑う杏寿郎は、弟の千寿郎くんみたいに困り眉になっていた。
その顔がなんとも可笑しかったのだが、私は淡々と続けた。
「ね、聞いて、杏寿郎。私、杏寿郎のことは好きだけど、あなたと私じゃ釣り合わないと思う。隊士だから明日の命もわからない、柱だし一般隊士よりも危険な任務に赴くことも多い。それに、さっきも私の生活の話、したでしょ?こんな女性とも言い難いような私よりも、名家の生まれなんだからあなたにはもっとしとやかな…」
と、続けようとしたが杏寿郎の顔を見てハッとした。
「杏寿郎…?」
「いや、すまない。聞いている。
だが、君の言いたい事はそれだけか?」