第1章 ※煉獄杏寿郎
私は、終いだな!とアッサリと話をまとめた杏寿郎を前にポカーンと口を開けてぼんやりしていた。
言うだけ言って杏寿郎は酒を口にし、
「問題ない。既にある程度御館様にも打診してある。何も言われはしない。それとも嫁入り前に俺と寝食を共にするのは憚られるか?」
ハッとようやく頭がまわり、
「いや、そんな事言ってたら任務なんて出来ないし。現に今だって寝食を共にしようとしてるし」
急な展開に慌てて私も呑みながらそう答えた。
「カヲルは誰とでも寝食を共にするのか?」
ぐっっと杏寿郎が私に顔を近づけた。
「え、ちょっと、、杏寿郎!っ近いよ、、…」
私は杏寿郎の大きな目からなんとか目線を逸らし、手元のお猪口に視線を向けた。
「俺はカヲルだからこうして酒に誘い寝屋も共にしようとしている。他の女性隊士と同じになるようなら俺は屋敷へ帰るからな」
「なっ……」
目線を逸らした先のお猪口を持つ私の手首を杏寿郎の手が包む。
「杏寿郎、お酒、そんなに強く無いでしょ…、酔ってるよ、酷く…」
必死に言葉を絞り出してこの場から逃げようとする私に
「確かに俺はそんなに強く無い。だがこれしきで酔うことも無い」
そう言うと杏寿郎は私が両手でなんとか持っているお猪口を取り上げると、少しばかり残っていた酒をグッと飲み干しコトリと盆に置いた。