第1章 ※煉獄杏寿郎
「そういえば、千寿郎くんは元気?」
私が話題を変えると、杏寿郎はハッと目を開き
『あぁ、お陰様で息災だ!千寿郎もカヲルのことを気にかけていたぞ!ちゃんと休んでいるか、飯は食べているのか?とな!』
「そっか、優しいね、千寿郎くんは」
私がフッと息を吐きながらそう言うと、
『千寿郎だけじゃない、俺もカヲルが心配だ』
杏寿郎は急に真顔で、いつものクソデカボイスではない、静かな声で諭すように話し出した。
「カヲルはどうやら殆ど休んでいないらしい、と風の噂で聞いた。御館様に頼んで#NAME1の任務の場所を教えてもらい駆けつけた。案の定、大きな怪我こそしてないものの傷だらけだ。君はもう少し休むべきだ」
いつもの杏寿郎と違って、諭すように語りかけるから聞き入ってしまう。燃えるような髪と大きな目。なんてきれいなんだろう。
「鬼ばかり追いかけて、自分の事を後回しにし過ぎだろう」
確かに。藤の家に着いた時、任務の後というのに杏寿郎はキラキラ輝いていて、隣に立つ私はというとボロボロに汚すぎて野犬のようだったもんね。藤の家の方も確かにビックリしてた。
これで女だってんだから尚更。
「んー、けど今の生活が性に合ってるからなぁ。屋敷に帰っても誰かいる訳でも無いし、1人分のご飯やお風呂なんて面倒くさいし、それなら野宿でも私は別に問題ないし…」
『それなら煉獄家に拠点を置けばいい!』
急なクソデカボイスにビクッとなった。
『それなら千寿郎も喜ぶ!父上はわからんが…気にする必要はない!御館様には俺から言っておこう!』
「や、杏寿郎…、ちょっと待って…」
『いや、決まりだ!これでこの話はお終いだな!」