第2章 前日、罰は免れた【稲田】
「、何やってんだ。遅れるぞ」
どうやってこの状況から逃げ出そうかと必死にもがいていたら、グイと肩を掴まれて稲田先輩の手はあっさりと離れた。
「は部活があるんで、失礼します」
稲田先輩との間に入ったのは依田先輩。後ろからだから依田先輩がどんな表情をしてるかわからないけど、いつもより声がちょっと怖い。
「はいはい。じゃあな、」
「はい、失礼します」
相変わらず稲田先輩はニコニコと笑いながら手を振ってたけど、私は依田先輩に手首を掴まれて引きずられるように歩く。
「あの……」
「何だ?」
大股で歩く依田先輩に小走りでないと追いつけない。
「ありがとうございました」
お礼を言うといきなり立ち止まるから、勢い余って背中に激突した。
「ったく、さっきのじゃ俺が暴力部長みたいじゃないか」
「ち、違います。そんなつもりで言ったんじゃなくて……」
振り返った依田先輩は呆れ顔。慌てて言い訳をしようとするとポンと頭を撫でられる。
「まぁ、一年が三年に逆らうのは難しいのもわかる。俺を悪者にして逃げる案も悪くないが、相手が悪かったな」
あの人が相手じゃなぁと学科の違う依田先輩が苦笑いすると言う事は、稲田先輩はやはり校内でも有名なのだろう。