第2章 前日、罰は免れた【稲田】
「暑そうですね。あ、これまだ使ってないんでよかったらどうぞ」
「そうだな、通しでやると結構汗をかくよ」
持ってたタオルを渡すと礼を言われた。笑顔で汗を拭くだけでも様になるんだからすごいなぁ。
「応援団って三年が中心で決めてるんですか?」
「あぁ、基本的にはな。うちは毎年援団だけど、学科によって毎年変えたりするから面白いぞ」
毎年違うのって大変そうだけど面白そう。
「うちの科って何やるか知ってますか?」
「本当は本番まで隠しておく方が面白いんだけど……聞きたい?」
「はい!」
顎に手を当てて考えてる様子だったけど、聞きたいかと聞かれればそりゃあ聞きたいに決まってる。
大きく頷くと手招きされて、顔を近づけると耳元でこっそり囁かれた。
「今年の酪農科は、女装チアらしいぞ」
「え、えぇ~もがっ!?」
「声がでかい」
予想外の言葉に思わず声を出したら、慌てて口を塞がれた。
「これ、内緒な」
自分の唇に人差し指をあててシ~っと言う稲田先輩はウィンクまでして、こんな間近で言われたら卒倒する子とかいるんじゃないだろうか。
いつまでも手を放してくれないから、コクコクと何度も頷くとようやく解放された。
「びっくりしました」
「が大きな声出すからだろ」
大きく深呼吸してると笑われる。
「しかもちょっと痛かったし」
「悪い、力入れすぎたか?」
稲田先輩の手は大きいから口どころか顔の下半分を掴まれた状態だった。
頬を撫でてると先輩の両手が頬を挟んで上を向かされる。
「い、稲田先輩?」
「腫れてはないよな」
真面目な顔でジッと見つめられると非常に気まずい。というか、この体勢はかなり危ういんじゃないだろうか。