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恋、つまり、まばたき(R18)【カラオケ行こ!】

第7章 夢は、まぼろし?


狂児は数回店を訪れた際に楓なりの接待を受け、その真面目でおぼこく、奔放な母に振り回されても音を上げず働く健気なところに触れ、ちょうどそういう女を欲しいと思っていたので、しのぎに回される前に自分の女にすることにした。組の方で母親の借金返済の効率化のため、娘の楓に何か仕事をやらせるかと言う話にでもなれば、風俗関連のしのぎを持った者が嗅ぎつけてきただろう。今までに何度もそうやって、望まず苦界へ落とされた女を見てきた。自分たちの常套とはいえ、そして狂児自身もそれを為せる立場でもあるが、出来るだけそうはならないようしてやりたいのは情けというものだろう。
情が湧いたか、と兄貴分にも揶揄われたが狂児は構わなかった。

楓はこれまでの女のように金品や分かりやすい愛情表現をねだったりせず、従順で狂児の色に染まることも厭わない。かわいいところもあるし、体の相性も良かった。肌を見せるよう要求すると最初は固く体を閉じていたが、狂児が優しく甘やかすとゆっくりと彩付き、花開いた。
小柄で人形のように細く白く柔らかな肢体と、桜色の唇と、耳の奥が震えるような綺麗な声。狂児が触れれば恥ずかしがって甘く反応する。眉根を寄せて頬を薔薇色に染め、狂児の名を呼んで細い腕を伸ばし、長いまつ毛を伏せて瞳を潤ませる。会いたくなる。会って、柔らかな髪に、しとやかな肌に、触れたくなる。そういう女だった。
物静かな楓は狂児が疲れている時はそれを察して、温かく優しく癒そうと努めてくれた。いつしか彼女の前では、極道の世界を生きるために身につけてきた仕草を使わないようになっていた。そしてそれは狂児の普段の生活の中でも活きるようになった。
狂児の中で、極道は相手に威圧を与えてなんぼの世界という形像だったが、素の柔らかい印象を与えたほうが色々とやりやすいこともあると知った。
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