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恋、つまり、まばたき(R18)【カラオケ行こ!】

第7章 夢は、まぼろし?



目を閉じて短くなったタバコの最後の一息を吐く。流石に、短時間で考えに整理がつく事ではない。



「なんの因果やろなあ……」

思い当たる節なら大量にある。我ながら業が深い。
狂児は右腕の新しい刺青になった二つの漢字を、唇でその音を撫でながら、左手の指先でなぞった。

おんなみたいな名前や。
自分のものにしたいのか、聡実のものになりたいのか、今はまだ分からなかった。
目を閉じると彼の横顔の婉麗な稜線が浮かぶ。そこに流れる汗と、はらはら零れる涙の美しいことと言ったら。狂児には表せられるだけの美辞麗句などは浮かばなかったが、思い出すだけでまぶたの裏が眩しく感じた。
泣かせるつもりなどいつも無かった。
会いに行くと決めたが、それでいいのだろうか。本当に。淡い迷いが未だ燻り続けている。

目を開けると思考の間吸い続けて灰皿に溜まった吸い殻が目に入る。捨てようとキッチンに向かった時、スマホがメッセージを受信した。

「楓……?」

このタイミングで、と思わずにはいられなかった。
通知の欄には「お疲れ様です、朝早くごめんなさい。読んだら連絡を…」と、いつも通り真面目な書き出しがうかがえた。
内容を確認する気持ちが逸る。トークアプリの緑色のトップ画面が早く切り替わることを願った。
楓のアイコンをタップし、
狂児は今日、二度目の驚きの表情を浮かべた。

「なんやこれ……」

狂児は通話画面を開いた。ほぼ同時に椅子から立ち上がり、車のキーを手に取った。

女から別れ話を持ちかけられるのには慣れていたが、全くなんて因果なのか。狂児の口元には自虐の笑みが浮かんでいた。






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