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恋、つまり、まばたき(R18)【カラオケ行こ!】

第7章 夢は、まぼろし?


『子供が出来たの』
『あなたの子』
『すごく嬉しい』



なんやこれは。
狂児の眠気で半開きだった目がみるみる全開になる。
思い出せると胸の甘い痛みが強くなる。痛みといえば痛みなのだが、そこに新しい臓器が出来て、新しい機序を持ったような、そんな感覚で。懐かしいようで慣れない、不思議な感覚だった。
ただの夢だが、何か予知めいたものではないかと狂児は訝しんだ。こういう妙に印象に残るものほど後に、あの時の、ということがあるのだ。直感を重視する世界で生きてきただけに、夢のお告げというものをバカに出来なくなった。

しかし肝心の子供が出来た、と嬉しげに告げる女の顔が思い出せない。

しかし思い当たることはあった。

『楓か……?』

そもそも、この数ヶ月抱いている女といえば楓しかいない。数人囲っていた時期もあったが、出所後は気づけば楓だけになっていた。

楓と出会ったのは今から5年ほど前。女を数人囲っていたが色々と煩わしくなり、おとなしい女に絞ろうと考えていた頃。兄貴分と一緒に債権の回収に向かった先だった。
借金主の楓の母は真面目に働いているつもりでも、店の経営をまともに勉強をしたこともない女だったので、負債が随分とかさむようになっていた。様々なところから金を借りて首が回らなくなってしまったと相談され、こちらとしてもそれでは返済がなく困るため、全ての返済を祭林組に一本に纏める話をつけた。もちろん利子はそれなりにつくし、返済期間も長くはなる。むしろその方がしのぎが続き好都合ではあった。
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