• テキストサイズ

恋、つまり、まばたき(R18)【カラオケ行こ!】

第4章 いとしくて、かなしい 2


狂児と体を重ねるたび、楓はこう思っていた。
誰もを虜にする甘い笑顔も、腹の底に響く低い佳い声も、星一つない夜空を思わせる目も、今は楓だけのものだ。誰のものにもならない狂児が、今だけは自分だけのもの。
いつもそう思うだけで、多幸感に包まれていた。たとえ彼にとっての自分は複数あるおもちゃの一つだとしても。
だが今日は見てしまった。右腕の名前が浮かぶ。取るに足らないことのように狂児は話していたが、刺青を見るときの目が、今まで見たことのない目だった。

(誰のものにもならないから、逆に安心していたのにな。)

目の奥が熱くなる。体は深く繋がっているのに、彼はきっと、ここにいない誰かともっと深く繋がっている。そんな気がした。
嫉妬ではなかった。諦め、というのとも違っていた。何故だか、目の前の愛おしい男がいっそう愛おしく思えた。
胸が熱くなり、涙が溢れる。

「狂児さん……大好き……」
「……俺もやで」

蕩けるような優しい笑みが、今は胸が引きしぼられるように苦しい。
もっともっと強く抱いて欲しい。何も考えられなくなるくらいに。


狂児の首筋に腕を回し、楓は腰をくねらせた。半分近くまでペニスが抜け、そしてまた、ずるん、と奥まで入ってくる。
下側になった体ではもどかしい。

「ん、ん、あっ、狂児さん、狂児さん……もっと……して、いっぱい……!」

狂児の引き締まった腕が、楓の肩を抱いてぐいと引き起こした。膝の上に楓の脚を広げて跨がせ、腰を抱かれるとまた、深部まで侵入される。

「んーーー……!!」

深い挿入感に腰が反れて、自然にきつく締め上げてしまう。そしてそれは同時に、楓の骨盤の中が狂児でいっぱいになるのを感じさせた。
下から突き上げられ、楓の体が跳ねる。

「あっ、あっ!狂児さん、あぁ、深いですう……!」
「楓ちゃんの一番深くまで、ちゃんと愛したるからな」
「あっ、あっ、うれし、い……あぁっ!」

突き上げられる衝撃で腹の奥が熱く疼いて、何度も意識が飛びそうになる。手や足の先がじんわりと痺れて首の後ろがくらくらして、今にも視界が白くなってしまいそうだが、手のひらに爪を立てて堪える。
/ 53ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp