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恋、つまり、まばたき(R18)【カラオケ行こ!】

第3章 いとしくて、かなしい



食事を終え、再び狂児の車に乗り込む。そういえば以前はセンチュリーだったが、今はベンツだ。2台目なのかと思ったが、先ほどの話を聞いて合点がいった。

楓は車には疎いが、恐らくこの黒く厳しいベンツも以前のセンチュリーと同じか、それ以上の値段がするのだろう。
道路を走っている時、前後の車間距離を非常に空けられる。走りやすそうだな、と思った。







楓の部屋に戻り、バスタブに湯をためて、ジャグジーをオンにする。

「おいで」

狂児がすでにシャツを脱いで、上半身裸になって楓を誘う。もうここからは、楓の意思はあってないようなもの。だけど楓自身も、もうなんの気兼ねもなく狂児と甘い時間を過ごせると思うと、期待で胸が高鳴った。

狂児の素肌の背面全体には壮麗な、翼を広げた鶴。他にも様々な意匠を背負い、前面は胸のあたりを丸く円を描くように、そして肘の下まで隙間なく藍色の刺青が覆っている。その大胆で見事な絵柄に楓はいつも息を呑んで見とれていた。
以前、楓もこういうのを入れたいか?と彼に問われたことがある。その時は痛そうだから結構です、と答えたが、体に刺青を入れるということは、彼の女であると主張することなのだろうと今なら分かる。他の女はこぞって入れたがったのだろうか。楓の答えを聞いて狂児は、それがええで、と笑って言った。

まだ、例の組長が入れたという刺青は見当たらない。相当小さいものなのだろうか。



服を脱いで、髪を結んでクリップで纏める。
鏡の前で少しの間、おかしなところはないか確認して、すでにジャグジーに浸かっている狂児の元へ急いだ。
バスタブの淵にかけられた右腕に細い筆で書いたような文字が見え、楓は目を見開いた。

『聡実』

全身に電気が走ったように感じたが、
あえてそれには触れず、楓は湯に体を浸けた。

「こっちおいで」

狂児に腕を引かれ、後ろから抱きつかれる。
乳房を弄られ、思わず声が出た。

「んん、や……」

狂児の右腕の、2文字が目に入る。
いったい誰のことなの。
目に入れないようにしているのに、どうしてもそこに目が行ってしまう。

「ん?……ああ、これか」

刺青に気付いた楓の様子を察した狂児が、自分の右腕を掲げた。
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