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恋、つまり、まばたき(R18)【カラオケ行こ!】

第3章 いとしくて、かなしい


出所してからも色々とあり、組恒例の年4回もあるカラオケ大会で、出所後の最初の回でとうとう最下位になった話もされた。

ということは、最下位の人間に与えられる罰として組長に刺青の練習台にされてしまったのだろう。その腕前を前々からカス、とまで辛辣に評していたのを知っているのであまり見せたくないものだろうと楓は察した。綺麗な体に、どんな絵を入れられてしまったのか。後で、分かるのかもしれないけれど、見るのが少し怖い。
お喋り好きな狂児の話は続く。

お勤め中は規則正しい生活で、最初のうちは健康になった気がしていたがタバコが吸いたくて仕方なくなり、刑務所内の人脈でどうにかして手に入れた銘柄がしょうもないもので、仕方なく吸ったがたまらなく美味かった、など、普通に暮らしていた楓には想像もできない話を沢山してくれた。
刑務所内でも内部の事情が分かるにつれて、狂児の仕事や組に縁のある者も何人か居たらしい。
そこでの繋がりも今後活きていくやろうな、活かさなあかんな、と二本目のタバコを手にして煙を燻らせながら極道の顔をして語る狂児に、楓は背筋が冷たくなった。
でも同時に、そういう話をしてくれるのも嬉しくてならなかった。楓はあくまで狂児の世界とは違う、堅気の人間だった。その楓に本来ならば話してはいけない事情まで話してくれている。楓のことを何を話してもいい相手だと過少に見ているのだと分かっていても、嬉しかった。

個室に料理が運ばれてきて、狂児はパン、と手を叩いた。

「さ、仕事の話は終わりや。楓ちゃんと出所祝いといくで〜」
「はい!」




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