第7章 今日からお世話になります
そのまま、つんつんと指で頬をつつかれる。
「はの、やめへふださいませんか」
拒絶の言葉も言いづらい。
「ははっ、かわいーねぇ」
これは、遊ばれている。
この酔っぱらいめ。
環くんは、とっくに部屋に戻ってしまっているので。
ここには私と二階堂さんしか居ない。
それが少し口惜しく思う。
もう、二階堂さんの事を怖いとは思わないけれど。
「それで? 話せそうか?」
二階堂さんは、そのままの姿勢で私に再び問いかけた。
やはり話す、というところまで、上手く説明できる気はしない。
でも、二階堂さんに適当な嘘をついても、見破られてしまいそうな気がしていた。
今日の、環くんみたいに。
二階堂さんが、私の頬から人差し指を離す。
そしてまたビールに一口つけ、頬杖をついた。
「どうお話すれば良いか、まだ分からないんです」
「いいよ、それでも。話せよ、お兄さんに。一華ちゃんはもう、俺達の仲間なんだからさ、堅苦しく考えなさんな」
そう言ってもらえると、少しだけ、ほんの少しだけ、気がラクになったような気がした。
でも、同時に。
私は言いしれない罪悪感を抱く。
ごめんなさい、私なんかのために。
ごめんなさい、時間も気も使わせてしまって。
ごめんなさい、仲間なんて素敵な言葉は私には似合わない人間なんです。
ごめんなさい、ごめんなさい。
心の中で何度も謝る。
――やっぱり、上手く話せない。
視界が滲んでくる。
ああ、ダメだ。
ここで泣いてしまったら、二階堂さんを困らせてしまうのに。
ぽたり、と目から涙がこぼれる。
「す、すみません! なんか、今日はやっぱり、私――」
話せそうにない、と断ろうとした所で。
バサリと、視界が何かに覆われて真っ暗になった。
な、なんだ?!
まさか停電とか?!
地震?!
一瞬で視界が奪われた事に恐れていると、そのまま首がぐわんぐわんと揺らされる。
私の顔を、布越しに誰かが無遠慮に、ごしごしと拭いてきていた。
「なっ、ちょっ、やめ、なんなん?!」
突然の事に頭が追いつかず、とにかく目を守るためにぎゅっと閉じたまま、口では声を出して拒否していた。
両手を急いで上まで持ってくると、誰かの両腕を掴める。
そのまま、その腕をぽんぽんと叩くと、私の頭に被せられていたタオルが相手にひらりと外されて。