第7章 今日からお世話になります
環くんとの会話を楽しみながら、寮まで帰ってくると。
和泉さんは既に眠る準備をなされているようで。
今ちょうど、浴室にいらっしゃるのだと、陸くんが話してくれた。
貴重なお誕生日に、私は何もできなかったなと、少しだけ落ち込む。
けれど、それを悟られるのはやっぱり恥ずかしくて。
私は、一緒に帰ってくれた環くんに、ありがとうをもう一度言うと。
環くんは、にかっと笑ってまた明日、と言ってくれた。
リビングに入ると、二階堂さんがビールを飲みながら、私の事を待ってくれていたようで。
軽く右手を上げながら、ようおかえり、と私達に言った。
「どうだ、一華ちゃん? 話せるか?」
ビール片手にゆったりとテーブルの上で頬杖をつく二階堂さんに。
私は、しばし悩んだ後で、こくりと頷いた。
「上手く説明できる自信が無いですけど」
「そんなの、誰も気にしねぇよ。お前さんは最初から、説明が下手な子でしょうが」
「・・・・・・私、そんな人間に見えるんですか?」
二階堂さんの、たぶん何気なく言った一言が、私の心に小さな棘を刺す。
それを隠そうと、私は笑顔で言ったつもりだったけれど。
とっさの事で、妙な間が空いてしまった。
二階堂さんは、缶ビールを左手でゆらゆら揺らしながら、リラックスした顔のまま私に言った。
「見えるよ。説明は下手だし不器用だし、自分の事大事にしねえし。同い年として心配になるよ、お兄さんは。でもな」
そういう所、たまらなく応援したくなるんだわ、不思議とな。
と、最後に付け加えられて。
私は、どうしてだろう、と思った。
そこまで好意的に見てもらっているとは思っていなかった。
――応援したくなる。
どうして?
私は、なおも考える。
「ははっ、それは納得してませんって顔だな?」
私の本心を二階堂さんに当てられて、一瞬うろたえた。
楽しそうに、嬉しそうに笑う二階堂さんの前で、私は目を泳がせている。
「納得、は、確かにしてませんけど! だって、応援されるのは、二階堂さん達皆さんの方じゃないですか?」
そうだ。
アイドルは声援を贈られて、それに応える仕事。
私のような人間に、応援なんて言葉は相応しくない。
そう思っていたら。
二階堂さんが手を伸ばして、私の顔を指さしてきた。
「そんな暗い顔しなさんな」