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get back my life![アイナナ]

第7章 今日からお世話になります


 目の前に立っていたのは和泉さんだった。
 しかも、なんだかとても不機嫌そうだ。
 私、またいつの間にか和泉さんを怒らせたのだろうか。
 ここで怒られるのは恥ずかしい。
 だって、傍には二階堂さんが居るはずで。
「あなた、今日は随分泣き虫ですね。帰りの車の中でも、今も、泣いて――」
「わー! わー! わー!」
 和泉さんの唐突な暴露を、私は驚きつつも大声で遮る。
 が、既に遅かったらしい。
 和泉さんの後ろで、テーブルにひじをついたままの二階堂さんは、にまにまと愉しげに笑っている。
 ああ聞かれてしまった。
 二階堂さんはその笑みを深め、なぜか親指を立てる。
 ナイス、イチ! とでも言いたげに。
 人の不幸がそんなに楽しいですか愉快ですか滑稽ですかそうですか、私は消えたくなってますけどね!!
 心の中の不満が顔に出ていたらしい。
 二階堂さんは私の顔を指さして、のけぞりながら大声で笑い始めた。
(そ、そんなに笑わんくってもええやん?!)
 今日は人から笑われてしまう日なのだろうか。
 そんなに悪い事をしただろうか。
 いや、悪い事なら過去に一つ大きすぎる過ちをしてしまった私だけれど、これがその報いとは思えない。
 報いにしてはヌルすぎる。
 そして恥ずかし過ぎる!
 後ろから誰かに殺される方が何倍もマシで、妥当で、まっとうで。
 だから。
 こんな明るい雰囲気の罰は、私にはそぐわない訳で。
 なのに。
 なのに!
 げらげらと笑う二階堂さんにつられてなのか、和泉さんの口元まで綻んでいって。
 小さな笑い声を、私の耳が拾った。
 ああ、もう、なんだかなあ。
 分かってるのに、ダメだって、分かってるのに。
 私まで楽しい気持ちになってきてしまって。
 気づけば三人、顔を突き合わせて笑っていた。
 過去も未来も関係ない――今の気持ちが先立った。
 ころころと、笑う。
 こんなに軽い気持ちは、いつぶりだろうか。

 二分もしないくらい、でも、それぐらい長い間笑い合ってから、私は話を切り出した。
「・・・実は、私の居場所について、ちょっと考えてたんです」
「居場所?」
「と、言いますと?」
 二階堂さんも和泉さんも、同じ顔で私に尋ね返してくる。
 私は、少し深呼吸をして、ゆっくり話し始める事にした。
「鳥居先生から、書類を渡されておりまして――」
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