第77章 咲くは朱なれど散るは白
そもそもこの男、『蘆屋道満』に関する記憶が抜け落ちているにも関わらず、無惨はこの声に従わなければならないという使命感に駆られている。
拭えない違和感。
困惑の表情を浮かべる無惨に白藤が呼びかける。
「舞山様!!その男に従ってはいけません!!」
白藤とて、全てを思い出した訳では無いが、この男が脅威であることを本能で感じ取っている。
蘆屋道満が只者で無いこと。
その姿を目視するだけで頭に霞のかかる様な現象も。
全部、この男のせいなのならば……
「白藤……?」
無惨が絞り出した声は何故か酷く掠れていて。
でも、何故か。
その声音に……
引き寄せられる……
視線が離せない。
そう、私と貴方は……
同じ道を歩いていた、筈だった……