第77章 咲くは朱なれど散るは白
かつての継国縁壱のように。
彼はとても、静かな人だった。
口下手で言葉足らずなところもあったが、隣に居て心地の良い人物であった。
人の縁は何処かで巡っている。
一つの線が幾つも伸びて、やがて今に至るのだ。
人の輪から外れた私を除いて。
だから、今の言葉がとても嬉しかったのだ。
化け物の私を受け入れてくれたのだから。
「反吐が出る。人間の言葉など所詮は全て詭弁だ」
蘆屋道満が嘲笑を浮かべながら、近づいてくる。
「人は神でも仏でもない。何の力も持たないただの弱者だ」
蘆屋道満の身なりが変化していく。
「鬼殺隊と言ったか?確かに鬼舞辻無惨は鬼だが、この私が作り出した鬼神だ。この場で貴様らを全員屠れば、鬼舞辻無惨は神格を得て、国津神へとなるのだ」
蘆屋道満は浅草で出会った時の無惨の様な黒髪の青年へと姿を変えた。
ともすれば、女性と見紛うような美しさを秘めた出で立ちだ。
「光だけが神ではない。闇でも、水底でも乞い願えば神は現れる……」