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〈HQ〉いいなりマネージャー【稲荷崎/R18】

第5章 霜天のブルーデイ《短編》






『ありがとう、少しお腹がすいたかも…っと。』



治に返事を送信したことを確認して、液晶をOFFにする。



何だかんだ、バレー部の中で一番気遣ってくれるのは、治かもしれない。



もちろん北さんをはじめとする先輩方はみんな優しいし、銀も親切にしてくれる。角名と侑は……うん、まあ…。


バレーへの熱量とご飯への愛の配分が同じぐらいだから、波長もあうのかな。
幸せそうにご飯を食べている治を見ると、わたしまでお腹が減ってくるし、幸せになれる。
ごはんの話をして一番盛り上がれるのは、間違いなく治だ。


そういえば私が一人暮らしだと伝えたら、家まで送ることを提案してくれたのも治だった。


具合が悪いことにいち早く気付いたのも、心配して帰るように勧めてくれたこともそうだ。



食べることにしか興味がないように見えて、実は一番気にかけてくれているのかもしれない。





今までのことを思い出して、目頭が熱くなるのを感じた。




どうして、治はこんなに優しくしてくれるのかな。

部に貢献できないなんて、マネージャーとしては失格なのに。





それでも。






『…弱っている時に、助けてくれる人がいるってあったかいなぁ。』




なんて幸せ者なんだろう。




誰にも聞かれることのないひとりごとをぽつりとこぼした。





すうすうと寝息をたてる侑の方に意識を向ける。

繋がれた手は、じんわりと熱を持っていて。




少し恥ずかしいけれど、決して嫌ではない。



むしろ、「ここにいるからな」と言われているような気がして、安心できる。




小さな子どもみたいだけど、何気に優しいんだよね。



治くらい真っ直ぐだったら、お互い素直になれるのにな。




侑も治も別々の一人の人間だ、ということは分かっているけれど、こういう時はどうしても比べてしまう。





まあそれでも、




治の真っ直ぐな優しさも、侑の不器用な優しさも甲乙つけられるものではなく。



どちらもとても愛おしくてあたたかい。幸せを噛み締める。






『ありがとう、治。侑。……大好き。』





届くことのない、愛しさとめいっぱいの感謝を呟いた。





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