第5章 霜天のブルーデイ《短編》
侑「もし今後またこいつに手え出そうとしたら…。わかってるんやろうなあ?」
まるで汚いものでも見るように、冷徹な視線で相手を見下す侑。
その迫力に2人組はすっかり萎縮してしまっていた。
侑の本気は洒落にならないんだよなぁ。
少し相手に同情してしまう。
「「は、ハイっ!」」
侑「さっさと俺らの前から消えろや」
「くっそ……次の試合でボコボコにしたる」
侑「ア゛ァ?自分らみたいな雑魚が俺らに勝てるわけないやろ。返り討ちにしたるわ」
「覚えとけよ、」
侑「おーおー、負け犬はよう騒ぐな。見苦しいから、はよ失せた方がええで。」
バタバタと走っていく足音。
侑「アイツら、逃げて行きよった。」
ーーもう大丈夫やで。穂花。
しばらく侑の胸に顔を預けていたものの、彼らが立ち去ったことを確認して安堵の溜息が漏れる。
腕の中から身を離すと、すっと差し伸べられる手。
侑「ほれ」
その大きな掌に、おずおずと自分の手を重ねる。
異性と手を繋ぐなんてはじめてのことなので、熱くなっていた身体が余計に火照りだす。
侑「俺らも行くか」
『あ……、うん』
そう言って握り返した侑の手は、自分のものより少しひんやりしていて心地よかった。
のだが。
『こ、こわかった……』
侑「は…?」
安心して力が抜けたのもある。そして体温がどんどん上昇していることも原因なのかもしれない。
脚に力が入らず、地面にへたり込んでしまった。
うわぁ、絶対バカにされる…。
恥ずかしくなってギュと目を瞑ると、上から降ってきた言葉は思いもよらないものだった。