第5章 霜天のブルーデイ《短編》
ドスの効いた低い声が響く。
突然視界に入ってきたのは、少し前まで教室で話していた金髪頭で。
『あ、あつむ……』
「げ、宮侑やんか」
「タイミング悪いな、」
ぐっと腕を引かれて、侑の腕の中にすっぽりと収まる。
侑の匂い。
よく知っているその香りに包まれて、緊張が解れるのがわかる。安心したら力が抜けてしまい、目の前にある鍛えられた胸板に身を委ねた。
侑「俺の大事な奴に何してんねん。」
侑が二人をキツく睨みつける。
「あ?しんどそうやったから看病したろ思ただけや!邪魔すんなや」
「せっかくいいところだったのに」
侑「ええ加減にしいや。どう見てもこいつ嫌がってたやろ」
侑の腕に力が籠る。けれど、その触れ方はさっきの二人に触れられた時とは違って、あたたかく優しかった。
侑「それに、こいつには宮侑クンちゅう超絶イケメンの想い人がおんねやから、お前らみたいな雑魚が何しても無駄やで。」
『ちょっ、侑?!』
事実無根だ。とんだ出まかせを言われて、たまらず抗議の声を上げようとしたものの、
ーーだからな。
さっさと失せろや、このクソ豚共。
「「ひぃっ!!」」
有無を言わせない怒気を立ち上がらせる侑の様子に思わず口を噤む。
普段の姿とは比べものにならない凄まじい殺気が見える。
もしかしたら試合中の侑よりも威圧感があるかも…。