第5章 霜天のブルーデイ《短編》
〈 side マネ 〉
「ほら、俺らと一緒に行こ?」
まずい。非常にまずい状況だ。
どうしてこんな厄介なことになってしまったのか。
ぼんやりとする頭で少し前の出来事を回顧する。
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遡ること半刻前。
学校から歩いてきたものの、
身体が鉛のように重く、脚が前に進まない。
ちょっとだけ休もうか、そう考えて人通りの少ない道の壁に凭れかかる。
呼吸を整えようと肩で息をしていると、突然後ろから男の人の声がした。
「ねえ。きみ、稲高のマネージャーでしょ?」
『そうですけど…』
「おお!ほんまか!」
声を掛けてきたのは2人組の他校の生徒で。
ジャージの文字から察するに、この前対戦した学校の部員らしい。
「やっぱり!この前会場で見て、かわいいなと思ってたんだよね」
「この前試合したんやけど、俺らのこと覚えとる?」
話しているうちにどんどん距離が詰められて、壁との間に挟まれるような形になってしまう。近い。