第5章 霜天のブルーデイ《短編》
〈 side 侑 〉
サムと銀が穂花と話しているのを横目に見つつ、気にかけないふりをして体育館へと駆け抜けた。
そして現在、放課後練の時間。
ボールが手にしっくりとこない。
いつもならバレーだけにどっぷりと熱中するこの時間。
今は何か心にひっかかるものがあって。いまいち深く集中できていない自分がいる。
その理由がどんなものかなんて、本当はとっくに分かってる。
ーーくっそ、アイツなんで風邪なんてひいたんや。
この前体調を崩して主将からお咎めを受けたことに加えて、マネージャーの体調不良の直接の原因である可能性が高い以上、穂花を責めることがお門違いだとは理解しているのだが。
胸底からふつふつと沸き上がる苛立ちを、どうしても抑えることができない。
ーー本当は、アイツにイラついてるわけやない。
己の管理能力の欠如で風邪をひいた挙句、それを大事な仲間に移してしまった自分の不甲斐なさ。
そして、消化しきれない気持ちから帰り際に見送って、労わる言葉のひとつすらかけてやらなかった後悔。
グズグズとした煮えきらない思いが、重苦しく心を蝕んでいた。