第5章 霜天のブルーデイ《短編》
角「ストップ」
侑「ブッ!」
接近してきた顔との接触は、角名の掌により既のところで遮断された。
侑「なにすんねん角名!」
角「いや普通に考えてアウトだから」
顔をおさえられた侑は恨めしそうな表情で角名を睨んでいる。
ーーーあとちょっとやったのに!
その呟きは穂花の耳には届かなかったが。
治「アツっ!これ熱あるやろ」
その代わりに治が自身とマネージャーの額に手を置き、その温度を確認する。
先程まで熱があったわけではないのだが、侑の行為で体温が急上昇したなど知る由もない。
ーーーーー顔ちっちゃ。片手で掴めそうや。あと肌すべすべやなぁ。
一方のマネージャーの意識は、おでこに当てられた少しひんやりした手のひらの感触に向いていて。
ゴツゴツと骨張ったやや硬めの包み込むような大きな手。
自分とはかけ離れているそれに、治も男子なんだなと実感して急に恥ずかしくなった。顔に熱が集まってくるのがわかる。
治「…宇佐美?どんどん顔赤くなってんで?」
角「ほんとだ。茹で蛸みたい。」
『わあーー!何でもない!です!!みんなにうつすと悪いから、放課後練はお休みするって北さんに伝えてくる!!』
侑「ちょお、っ!穂花!?」
恥ずかしいやら照れくさいやら色々な感情が爆発して、教室を飛び出した。
慌てて制止するような侑の声も聞こえたが、振り返ることもせず階段を駆け上り、北さんの教室を目指す。
普段は同じチームメイトとして、支えるべき選手としか考えていなかったが、ふと男子高校生なんだと意識してしまうと何となく気恥ずかしい。何より、彼らは顔面のクオリティが高いのだ。嫌味なくらいにモテる。
一旦意識しちゃうとしばらく直視できないな、そんな考えを振り払うように主将のもとへ走った。