第4章 終わりのないメランコリー《宮治》
「ただいま」
角名と自主練をやってから帰宅したその日。
玄関に、先に引き上げたはずの片割れの靴はなかった。
部室にはおらへんかったし、アイツどこおるんや
そんな風に怪訝に思うも、空腹には勝てるはずもなく。
「オカン、夕飯〜」
漂ってくるめしの匂いに騒ぎ出した腹の虫を静めるために食卓へ向かった。
もはや脳内を占めているのは食事のことだけで。侑の事など頭からすっかり抜け落ちていた。
夕飯を平らげて風呂を済ませた後、団らんのひとときを過ごしていると玄関から物音が。
音の主など1人しかいない。
「帰ったでー」
廊下に出て玄関の方を向くと、何やら頬を緩ませているツムが立っていた。
「何やニヤニヤして、気色悪いわ」
「あ゛?!」
俺より早く練習を切り上げていたはずなのに、この時間に帰ってくるなんてどこかで油でも売っていたのか。
まあ、コイツなら別に珍しいことやないしな。どことなく上機嫌のヤツを見て考える。
「はよ飯〜」
と言って、廊下を進む侑とすれ違った時、かすかによく知っている匂いが鼻腔をかすめた。
宇佐美の匂い。