第3章 HBD 愛すべきツインズ《番外編》
〈 side マネ〉
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また双子の喧嘩がはじまった。
こんなに騒いでそのうち北さんにシメられるなぁ、
少し呆れながら隣の主将に視線を移す。
その端正な顔はどこか柔らかい笑みを浮かべていて。
予想とは対照的な表情に、思わず声を掛ける。
『北さん、どうかしました?』
「ああ。こいつらこの先もずっとこうなんやろな思ってな。」
そう語る声はとてもあたたかいものだった。
「こいつらは、きっとこれからも前だけ向いて生きていく。真っ直ぐつき進む奴らが、後ろを振り返ることなんてなく突っ走れるよう、せめて背中は支えてやらんとな。」
あまりに献身的なその答えに、考えるより先に口が動いていた。
『北さん、私もその役目一緒にやらせてくれませんか?』
「…!」
驚いたように少し目を見開いた主将。
冷静淡然のようで、実は奥底にひっそりと熱を燈しているその琥珀色の瞳がよく見えた。
真剣な話をしているのに、綺麗だなぁと思ってしまうのは不謹慎だろうか。
『わたしもこのバケモン達がどこまでも翔んで行けるように、力になりたいです。』
そう力強く告げると、北さんは口角を緩ませた。
『北さんはコートの中、私はコートの外で支えていきましょう!』
「…せやなぁ」
優しく微笑んだ北さん。
こんな表情もするんだ、笑顔も素敵だなぁと心の奥に潜めた恋心が揺さぶられた。
「まあでも………」
そろそろええ加減にせえよ…とゆらりと立ち上がった北さんの圧は今日1番のもので、震え上がった双子を見て笑ってしまった。
………角名は相変わらず動画撮ってるし。
幸せってこういうことを指すのかな。
いつもと変わらない部員達との風景をみて思う。
この日常の真ん中にいるのは、間違いなくあの双子で。
『生まれてきてくれてありがとう。侑、治。』
胸に込み上げてきたこの想いを、誰にも聞こえないように呟いた。
1月の春高まであと3ヶ月。
負ければそこで北さん達3年生は引退。
悔いのない幕引きができるように、明日からも全力で頑張ろうと心に誓った10月5日の今日だった。