第1章 始まりのナイトメア《宮侑》
修繕の終わったユニフォームが入ったカゴを抱えて部室へ入る。
一つひとつ丁寧に畳み、それぞれのロッカーへしまっていく。
数十枚を片付け終わり、残すユニフォームは一枚。
背番号1番。
北さんのものだ。
反復、継続、丁寧を信条にしている人に対して妥協は許されない。
今までのもの以上に慎重に四隅を揃えて畳む。
きちんと畳み終わったユニフォームを仕舞おうとして、
ふと愛しさと切なさが込み上げてきた。
いつもバレーに真摯な北さんが身につけているユニフォーム。
どうせ叶わない恋ならば、これくらいのことは許されるんじゃないか、
そんな気持ちに押され愛しい人のユニフォームを抱きしめた。
もちろん、良いことじゃないのはわかっている。
でも今日は少し疲れていたのか、そんな判断ができなかった。
『北さん…』
「へえ、面白いもん見ちゃったわ」
目を瞑っていたら、背後から声がした。
声の主がいる方向へ慌てて振り返る。
ドアのところに立っているのは侑だった。
ニヤリと意地の悪い笑みを浮かべてこちらを見下ろす侑の姿に、背筋にひやりとしたものが流れるのを感じた。